福島へお米の里帰り(後編)

南相馬へのお米と野菜のお届を終え、明日炊き出しをさせて
いただく福島市の吉倉地区へ向かう。

福島市へ向かうにはまた飯館村を横切る事になる。


福島市も線量が高いといわれているので、用心用心!

といいつつ、飯舘村の村内の自動販売機で飲み物を買おうと
する男どもであった。


一時間半ほどで福島市吉倉地区に到着。
公務員住宅を探す…

あった…

四号棟…

あった…

7階建てのとても新しい建物…

避難先のイメージとはちょっと違っていた。


区長さんの鴫原(しぎはら)さんにお会いする

目元に優しさがにじみ出ている方だ。


よかった!



電話でのやり取りではやはり訛りが分からなくて、
何度も何度も聞き直したり…失礼の数々でしたが、
直接お会いしてお話すると分かりやすい。


よかった!



「ここは飯舘村でも妊婦さんのいる家庭、子供のいる家庭を
 優先的に一番最初に避難できた人たち80世帯が住んでいます。
 280人のうち子供が80人ほど。」


なるほど…


「ここは見た目に立派な建物で余裕があるかの様に見えますが、
 住んでいるのはみなさん被災者です。
 物資も昨日初めて水が届いただけですし、炊き出しも
 あなたたちが初めてなんです。」


えっ!物資届いてないん?
炊き出し私たちがはじめて?


意外な言葉が飛び出した。


やはり物資には偏りがあるんだな…


と、空いた部屋を集会所代わりに借り受けたという場所に案内
してもらい、話しつつ炊き出しの打ち合わせと現場確認。


ガスの手配は鴫原さんがすでにしてくださっていて、本当に
助かりました。


「で、今日はあんた方はどこさ泊まる?」


「郡山の知人の家に泊めていただくことになっています。」


「郡山ってここから一時間半くれかかるよ!」


「えっ!一時間半!」


「そりゃ、高速走ったら30分かも知れねど…、また、明日朝
 早ぐに郡山さ出て来るんか?ここさ、泊まれば?」


と温かいお言葉をいただき、お泊りさせていただくことになり
ました。



なんて!あったかい人たちなんやろ!



ありがたい!


ということで、晩ごはんを作って一緒に食べることにしました。



そこで聞いた飯舘村の事


鴫原さんは私たちが通ってきた“長泥”地区の住人だったこと

そしてそこは飯舘村の中でももっとも線量の高い地域となって
しまっていること



村は若者に海外経験をさせてきたこと(ある時は新婚の奥さん
たちをも海外で研修させたり!)



教育に熱心な村なこと



”までぃ”(丁寧、丹精)に子育てをしてきた村のこと



”までぃ”の心を受け継ぐ人々であること




など、事故以前は本当に美しい日本の理想郷みたいな村の姿で
あったんだろう。


楽しい村での生活が目に浮かぶ…



それが原発の事故でみんな無くなってしまったんだ!


なんてことだろう…



「わしらはもういいんだ…残り少ない人生だ。
 しかし、子や孫らのこと考えだら…


 …夜も寝られねんだ…。」



この言葉がなかったら被災された方なんだってことが分からない
位陽気な鴫原さん



その鴫原さんが言葉に詰まる



なんて言葉を返したらいいんだろうか…



10時過ぎにはお開きになり、床に就いた

体は疲れているが頭が冴えている


眠らなきゃ

明日がある



あくる朝、天気は徐々に回復し晴れ間が覗く

晴れ女の本領発揮か!


仕込みには沢山の方がまな板と包丁持参で参加くださり助けて
くださった。


小さな子供たちも率先してピーラーでジャガイモの皮むきを
お手伝い!


もっと小さな子たちにはゆで卵の殻むき


人参、こんにゃく、大根、がんも…

どんどん煮込まれて…周囲は美味しいにおいに包まれていく。


お母さんたちにはおにぎりも握ってもらいました。



わいわい楽しい時間!



さてさておでんの完成です!


徐々に人も集まってきてくださり、
今回の”お米の里帰りプロジェクト”のお話をさせていただいた。



みんなで「いただきま〜す!」


「おいしい!」の声に疲れも吹っ飛びます! 


来て良かった!

私たちを受け入れてくださってありがとうございます!


後片付けを終え、集会所でお疲れ様会!


いろんな会話の中で

同席されたある方がおっしゃった


「中学生の女の子たちは…私らは福島の人としか結婚でぎね。
 もう、子供も産めねんでないかい…。って話してるって…」



少女たちがそんな会話をしてるって…

なんてむごいことだ!



私たちはこの言葉にどう向き合っていけるのだろうか…



まだまだ何も解決の目途もたってはいない。


今後どのような形でサポートをしていくのか…


私に何ができるのか…


今回、吉倉地区の方々といいご縁をいただいたので、いい
つながりを保ち続けていきたい。



忘れずに心にとめること


関心を持ち続けること